芥川龍之介全集 (★★★☆☆)

By | 2005年1月29日
芥川龍之介全集〈1〉

芥川龍之介全集<1>』読了。

芥川の文章は、目の前に言葉のレンガがブロック塀のようにずらっと並んでいるように思える。無駄な言葉は一切はぶかれ、必要なものだけが整然と並べられている。だから、芥川の小説の世界は、僕の知っている言葉ではなく、芥川の言葉で、精確かつ的確に理解するよう求められてしまう感じがする。

それは、その世界から逃げることを拒否されているような感じでもあって、読者である僕をものすごく疲れさせる。途中で何度も放り出したくなる。僕の理解の仕方を許してくれよって思う。

でも頑張って読み切ると、この人の「むなしさ」が痛いほど伝わってくる。そして、そのむなしさはやっぱり誰にでもあって、それを持って、生きていかないとダメなんだよ、なんて芥川から言われたような感覚を覚えてしまう。

有名な「鼻」という短編もむなしい。
この話は、アゴの部分まで延びた鼻をどうにかして縮めようと頑張る僧の話なんだけれど、短くなったらなったで、以前の状態であることを逆に望んでしまうという、ものすごく矛盾した気持ちがモチーフになってます。

―人間の心には互に矛盾(むじゅん)した二つの感情がある。勿論、誰でも他人の不幸に同情しない者はない。所がその人がその不幸を、どうにかして切りぬける事が出来ると、今度はこっちで何となく物足りないような心もちがする。(芥川龍之介『鼻』−青空文庫

「トロッコ」(→青空文庫)にしてもそう。行きのトロッコは急降下的に滑り、風を切る快感が味わえる。けれどそこから戻るには、たどってきた道を、自分の両足で一歩ずつ歩いていかなきゃいけない。そこから逃げることは決してできない。

改めて読み直したのですが、やっぱりこの人にはもうちょっと生きていてくれたらよかったのに、と思った。有名な言葉「ぼんやりとした不安」は、すごくよくわかってしまえるのですが、その辛さを、その気持ちを、もっと言葉にして欲しかった。ブロック塀を、もっと造ってほしかった。

でも、そう思うのは僕が一読者だからなんだろうな。木登りとかトランプとかしてる映像を見る限りでは、非常にお茶目な人に思えるのにね。(★★★☆☆)

◎参考
『或阿呆の一生』→青空文庫
 −自殺前に書かれた短編。中学生のときにものすごい衝撃を受けてしまったとです。

東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ 「漱石の生涯」
 −漱石との関連で調べているときに発見。
 非常にコンパクトにまとまっていて分かり易くて面白かったです。英国留学の項目はドキドキした。

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