【読了】なぜ戦争は伝わりやすく平和は伝わりにくいのか~ピース・コミュニケーションという試み~


なぜ戦争は伝わりやすく平和は伝わりにくいのか~ピース・コミュニケーションという試み~』読了。
いやあ、面白かった。
「戦争」のイメージは簡単にできるが、「平和」は難しいという導入からスタートする。そして権力者の戦争へのプロパガンダの方法について語られる。メディアはそのときどうしているのか、さらには「大衆」は何をどう感じているのか。戦争そのものを、さまざまな視点から読み解きながら「平和」について考えを深めていく良著でした。

いろんな論を援用しているので、ここからいろんな参考文献にたどり着けます。
気になったのを2つほど。

『戦争プロパガンダ 10の法則』より

  1. 我々は戦争をしたくない。
  2. しかし、敵側が一方的に戦争を望んだ。
  3. 敵の指導者は悪魔のような人間だ。
  4. 我々は領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う。
  5. 我々も誤って犠牲を出すことがある。だが、敵はわざと残虐行為におよんでいる。
  6. 敵は卑劣な戦略や兵器を用いている
  7. 我々の受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大。
  8. 芸術家や知識人もこの戦いを支持している。
  9. 我々の大義は神聖なものである。
  10. この戦いに疑問を投げかける者は裏切り者である。

これはなるほどなあと思いました。10番目まで行ってしまうと危ない・・・と言いつつ、すでにいくつかの話題はそこまでたどり着いている日本の状況も感じざるを得ません。

説得される大衆のパターンとして

  1. 返報性
  2. コミットメントと一貫性
  3. 社会的証明
  4. 好意
  5. 権威
  6. 希少性

影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか』

これだけだと難しいのですが、要するに関係性で人はいかようにでも動くということです。

圧巻だったのが最後の章「これからの平和教育を考える」。
平和教育というと、体験者が語り「戦争はやらないほうが良い」ということを学ぶあれが思い浮かびます。僕は多動だからなのか、結論がわかっている話をじっと聞いていられなくて、戦争はないほうが良いのはわかっているのですが、おしりがムズムズしてました。筆者は自身の学生時代を振り返って言います。

結論だけを重視しすぎて、逆に思考が停止していたのかもしれない。「なぜ平和の大切さを学ぶのか?」と問われたら、「二度と戦争を繰り返さないため」と優等生の答えはできただろうが、「どうして戦争が起きたのか?」とか「どうやって戦争をくり返さないようにするのか?」と追われていたら、おそらく答えることは出来なかっただろう。(p.180)

たぶん、「戦争はダメ」を前提として、その先にある「どうすればよいのか」という考えていく平和について学ぶことが、本来の「平和教育」なのかもしれません。それをするためのキーワードとして筆者は「ジレンマ」だといいます。そして以下のジレンマを提示します。

ジレンマの構造パターン

  1. 安全策の選択 or ハイリスク・ハイリターンの選択
  2. 公の利益 or 私の利益
  3. 短期的な利益 or 長期的な利益
  4. 自分の利益 or 他者の利益
  5. 規定のルール or 新たなアプローチ
  6. 人間関係の重視 or 合理性の重視
  7. 平時を基準にした利便性 or 非常時を想定した不便さ

京都大学防災研究所 矢守克也教授による(P.229)

いずれのパターンも「答えがない」ため、コミュニケーションが必要とされるのだけれど、人間は儚くも弱い存在。こうしたジレンマ一つとっても大衆の心理に流されてしまう。これを戦争と平和に当てはめると、「正」対「悪」という答えがわかっている二項対立ではなく、「正」対「正」ではないかと論が進む。以下、筆者が立てたジレンマである。

  1. 「正義」か「平和」か
  2. 「正戦」か「反戦」か
  3. 「戦争経済」か「平和経済」か

戦いの中に必ず「正義」があり、「平和」を求めている。一方でそれを「ダメ」と言い切っても、戦争や内戦は終わらない。武器を手にした人たちがどうすれば武器を手放すのか。わたしたちが享受しているハイテク機器も元は軍事産業で活躍していたものだったりする。平和に経済が回るためにはどうすればよいか。

いろいろな話題をあらゆる角度から説明されて、本当に圧倒されます。
前に進むための「平和」についてのこと、時期も時期ですし、ぜひ手にとってみてください。面白かった!

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