10年前の僕と連れはアウシュビッツにいた。
新婚旅行先としてはあり得ないのかもしれないけれど、僕らはこうした人間の負の側面は大切にしていこうねと話し合って決めたのでした。
この日も良い天気で、残虐な光景も一歩間違ったら景色のように見えてしまう。でも、この1つ1つ、すべてに物語がある。
…この眼鏡の一つ一つ、靴の一つ一つの物語を考え始めたら、たぶん僕の人生は終わってしまう。病気になっちゃうよ。でも、そういうことなんだ。
とにかくほんの一瞬でも、その場にいた人のことを考えることができたら。僕の生きている意味、生きていくことの意味が、ミリでもミクロンでもナノでもいいけど、前に進むような気がした。
その想いの共有が、できなくなってきている気がする。
いやでも待って。あなたの今いるその場所は昭和の時代は、江戸の時代は、平安の時代は、縄文時代は、どんな人やものがあったのだろう。
恋をした二人の失恋した場所だったかもしれない。いがみ合った悲しい事件があったかもしれない。キノコがたくさんとれる穴場スポットだったかもしれない。はたまた海だったかもしれない。
とにかく落ち着いて想像すること。
そのためには、みんな、余白が必要ですよ。
もちろん僕にだって。